部門紹介

リハビリテーション部門

 脳梗塞脳出血および硬膜下血腫によって、手足や顔に麻痺が出たり、注意が散漫になったり、食事がとれなくなることがあります。日常生活になんらかの支障が生じた方に、発症直後から急性期回復期生活期に渡ってリハビリテーションを行っています。また、肺炎等により安静状態にあった患者さんのリハビリテーションも積極的に行っています。
 リハビリテーションを行う場合には、様々な専門職種が患者さんとご家族にあらゆる面から支援をしていきます。

図1
患者さんと家族をサポートする専門職種

当院の特徴

リハビリ01

  1. スタッフの構成:
    理学療法士31名、作業療法士28名、言語聴覚士12名、公認心理師2名、事務員1名の総勢約74名が所属しています。発症直後から急性期回復期生活期に渡ってリハビリテーションを行なっています。
  2. リハビリスタッフの質向上に向けた取り組み:
    リハビリの知識と技術を習得するために、研修会への参加や学会発表を奨励し、スタッフ全員での勉強会も毎週行っています。また、新人教育や経験の少ないスタッフの教育にも力を入れており、患者さんの生活スタイルや希望を考慮したリハビリの提供に向けて、日々研鑽しています。
  3. 広島県地域リハビリテーション広域支援センターとしての活動
     当院は平成25年4月に広島県から『広島二次保健医療圏域における地域リハビリテーション広域支援センター』として指定を受け、積極的に活動しています。例えば、地域の方々からのリハビリテーションや介護に関わる相談への対応、区民まつりや町内会などの行事で医療・介護の相談や運動指導等を行なっています。
図2
リハビリスタッフの集合写真

理学療法
作業療法
言語聴覚療法
心理的サポート
急性期
回復期
生活期(訪問リハビリ)
生活期(通所介護)
地域リハビリテーション広域支援センターとしての活動
ニューロリハビリテーション

理学療法(Physical Therapy:PT)

 発症直後から関節をほぐす運動、筋力をつける運動、起き上がる・立つ・歩く練習を、その方の身体状況に応じて段階的に行います。「立つ」「歩く」練習では、『長下肢装具(足の付け根から足先まである装具)』を使用した歩行練習を積極的に行っています。杖や車椅子、装具が必要な方には、適したサイズやタイプを選択し、移動手段の獲得を目指します。
 退院後の生活に向けては、①退院前に自宅に訪問し、生活環境を整える(例:手すりを必要な場所に取り付ける)、②安全に外出できるよう、患者さんやご家族と一緒に外出練習することを行っています。

リハビリ03 リハビリ04

作業療法(Occupational Therapy:OT)

 「食事」「入浴」のような、日常生活を送る上で必要な身体の機能を獲得することを支援します。また、人が心も身体も健康に生活するためには、仕事・家事などの「役割」だけでなく、趣味・生きがいなど「生活を豊かにすること」も重要です。作業療法は「その人らしい生活の実現」を目標にしています。
 脳卒中を発症すると、脳の一部に損傷を受けた結果、手足の麻痺や、「記憶力」「注意力」「物事を計画立てて行う力」の低下が出現します。そのような場合には、「ご飯を食べる練習」「トイレに行く練習」「服を着替える練習」など日常生活に必要な動作の獲得を目標に関わっていきます。 そして、退院後の生活を見据えて、「ご飯を作る練習」、「電車・バスを利用して外出する練習」、「就労に向けた支援」など社会復帰に向けた関わりも行なっていきます。
 また、趣味や生きがいを持つことで、心・身体は健康となり、生活を豊かにすると言われています。そのため、作業療法の一環として、季節に合わせた草花や野菜の園芸・作品づくりなども行っています。

リハビリ05 リハビリ06 リハビリ07

言語聴覚療法(Speech Language and Hearing Therapy:ST)

 伝えたいのに上手く話せない、話を聞いても理解できない症状の「失語症」、唇や舌に麻痺があって呂律が回らない「構音障害」などのコミュニケーションの問題や、ご飯を食べる時にむせてしまうなど飲み込みの問題(嚥下障害)が生じることがあります。患者さんが自分らしく生活できるよう、コミュニケーションの練習を行ったり、食事の形態や食べ方を工夫する支援を行っています。
 また、退院後の生活を見据えて、自分が思ったことを言葉で表現し、家族や友人、 職場のスタッフとの会話に反応しながら思いを伝えたり、食べることへの楽しみを感じながら食事をとることが出来るよう支援を行っています。

リハビリ08 リハビリ09

心理的サポート(Psychological Support)

 公認心理師は、医療チームの一員として急性期回復期どちらにも関わり、患者さんとご家族に心理的なサポート(カウンセリング、心理教育等)を提供しています。
 ある日突然病に襲われることで、こころに大きなショックを受け、様々な面で不安を感じます。自分の思いを周りに話すことが出来ず、一人で抱えてしまうことも少なくありません。一方で、ご家族も本人も同様に、大きなストレスを感じ、家族だからこそ、お互いの事を思うが故に話しにくいこともあります。急性期では、本人も含めたご家族皆様の混乱した気持ちの整理をお手伝いし、こころのサポートをしていきます。
 また、治療が進む過程のなかで、ストレスが積み重なっていき、心身ともに疲れて意欲が減退したり、不眠や倦怠感を生じることがあります。情緒面では不安を感じたり、イライラしたりと浮き沈みが激しくなることもあります。さらに、治療を受ける意欲が低下したり、他の人に強く当たったりするなど行動面の問題もよくみられます。これらの症状は、病気による「心理的なストレス反応」です。回復期では、このようなストレス反応とうまく付き合って行くことを支援し、安心して治療に取り組めるよう患者さんのこころの健康をサポートします。

リハビリ11

急性期

 急性期の役割は、ベッドで寝ている時間をできるだけ短くし、「廃用症候群(安静臥床が続くことによって起こる様々な心身機能の低下や合併症)」を予防することが重要です。安全に配慮しながら、積極的に発症早期から実施しています。内容としては、身体状況に応じて

  • 起立、立位、歩行練習のような動作練習
  • 「食事」「トイレ」「着替え」のような日常生活に必要な動作練習
  • 食べる練習、話す練習 を行います。

リハビリ12

回復期

 回復期リハビリ病棟では、点滴や手術での急性期治療が終了した後に、より積極的なリハビリが必要な患者さんを対象としています。その為、退院後に一緒に生活されるご家族にも練習場面の見学や介助方法の練習を行ってもらい、介助方法の習得に向けたサポートも行っています。
 リハビリの場所は病棟、リハビリ室だけではなく、退院後の生活スタイルや生活場所を見据えて、公共交通機関を利用した外出練習、1泊2日の外泊練習、車の乗り降りの練習など幅が広がってきます。また、自宅へ訪問し生活環境を整えることも行いますので、早い段階から間取りや段差など自宅環境も確認していきます。
 自宅訪問の際には、退院後に担当となる介護支援専門員や住宅改修業者の方々も参加するため、患者さんとご家族をサポートするスタッフも増えていきます。

リハビリ13

生活期(訪問リハビリ)

 自宅を訪問し、身の回りの動作練習や、自宅環境・介護力を考慮したアドバイスを行いながら、趣味や家事などの生きがいや役割をみつけ、地域社会でより充実した生活が送れるようサポートを行います。
 具体的には、

  1. 歩行・トイレ・入浴・更衣・食事・家事などの動作指導
  2. 外出方法の提案や公共交通機関を利用した外出練習など外出に向けた支援
  3. 寝たきりや閉じこもりを防ぐ支援や精神・心理面の支援
  4. 家庭で取り組める自主トレーニングの指導、生活環境に関するアドバイス、ご家族への介助指導

など多種多様です。主治医や介護支援専門員のように地域社会で生活を支援している専門職と連携し、ニーズに合わせたリハビリテーション計画の立案と実施を、明るく元気なスタッフがお手伝いさせて頂きます。

リハビリ14

生活期(通所介護)

 関連事業部の通所介護「デイサービスあらき」では、利用者さんに朝から夕方までの時間に通っていただき、食事、入浴、機能訓練、余暇活動の提供を行います。機能訓練では集団で行う体操、個別に行う訓練があります。自宅での生活がより良いものになるように、今持っている能力を維持できるように、療法士はご利用中の利用者さんの活動の様子や、ご自宅の環境の確認を行いながら、支援していきます。また、利用者さんが通っている間の時間は、介護を担っているご家族のレスパイト(休息)にもなります。

リハビリ15リハビリ16

地域リハビリテーション広域支援センターとしての活動

 当院では平成25年より広島県から地域リハビリテーション広域支援センターの指定を受け、介護予防事業、医療介護連携の推進、災害時の被災地支援などに携わり、地域の住民さんが生き生きと生活できるための支援をしています。

リハビリ17 リハビリ18 リハビリ19

ニューロリハビリテーション

 ニューロリハビリテーションとは、一般的には神経疾患(脳・脊髄・末梢神経などの病気)に対するリハビリを指します。最近では、脳梗塞により障害された細胞を再生させる研究が進んでいます。このような再生医療など、研究によって明らかになった脳化学をリハビリ医療に応用した評価・治療方法がニューロリハビリテーションと言われています。
 近年、リハビリテーション分野では、ニューロリハビリテーションが注目を浴びています。当院で使用しているCYBERDYNE株式会社が開発したHAL®(Hybrid Assistive Limb®)は、ニューロリハビリテーションの中でロボットリハビリテーションとして位置づけられており、より効果的に麻痺の改善や運動学習を行う選択肢の1つとして、注目を集めています。HALは、人が「身体を動かしたい」といった脳からの信号をキャッチし、その信号を増幅・コントロールすることで円滑な運動を援助します。そして上手く動かせたといった感覚を反復して経験することで脳は身体の動かし方を再学習します。

HAL01 HAL02

単関節タイプを使用した訓練(膝関節)

HAL03

 

 

単関節タイプを使用した訓練(肘関節)

使用前

使用中

使用後

HAL05

下肢タイプを使用した歩行訓練

使用前

使用中

使用後

HAL07

PC版を表示