診療科・部門

リハビリテーション部

 脳梗塞、脳出血および硬膜下血腫によって、手足や顔に麻痺が出たり、注意が散漫になったり、食事がとれなくなることがあります。日常生活になんらかの支障が生じた方に、発症直後から急性期、回復期、生活期に渡ってリハビリテーションを行っています。また、肺炎等により安静状態にあった患者さんのリハビリテーションも積極的に行っています。
 リハビリテーションを行う場合には、様々な専門職種が患者さんとご家族にあらゆる面から支援をしていきます(図1)。

図1
図1.患者さんと家族をサポートする専門職種

当院の特徴

  1. スタッフの構成:
    理学療法士38名、作業療法士21名、言語聴覚士17名、臨床心理士2名、事務員2名の総勢80名が所属しています。発症直後から急性期、回復期、生活期に渡ってリハビリテーションを行なっています。
    1~3年目のスタッフが40%を占め、若いスタッフが多いのが特徴です。
  2. リハビリスタッフの質向上に向けた取り組み:
    リハビリの知識と技術を習得するために、研修会への参加や学会発表を奨励し、スタッフ全員での勉強会も毎週行っています。また、新人教育や経験の少ないスタッフの教育にも力を入れており、患者さんの生活スタイルや希望を考慮したリハビリの提供に向けて、日々研鑽しています。
  3. 広島県地域リハビリテーション広域支援センターとしての活動
     当院は平成25年4月に広島県から『広島二次保健医療圏域における地域リハビリテーション広域支援センター』として指定を受け、積極的に活動しています。例えば、地域の方々からのリハビリテーションや介護に関わる相談への対応、区民まつりや町内会などの行事で医療・介護の相談や運動指導等を行なっています。
図2
図2.リハビリスタッフの集合写真

理学療法(Physical Therapy:PT)

 発症直後から関節をほぐす運動、筋力をつける運動、起き上がる(図3参照)・立つ・歩く練習を、その方の身体状況に応じて段階的に行います。「立つ」「歩く」練習では、『長下肢装具(足の付け根から足先まである装具)』を使用した歩行練習を積極的に行っています(図4.参照)。杖や車椅子、装具が必要な方には、適したサイズやタイプを選択し、移動手段の獲得を目指します。
 退院後の生活に向けては、①退院前に自宅に訪問し、生活環境を整える(例:手すりを必要な場所に取り付ける)、②安全に外出できるよう、患者さんやご家族と一緒に外出練習することを行っています。

図3
図3.歩行器を用いた歩行練習の様子
患者さんの麻痺や身体状況に応じて、
段階的に進めていきます。
自分でできることが1つでも増えるよう、
繰り返し練習していきます。



図4
図4.装具を用いた歩行練習の様子
身体の麻痺が重い場合には、長下肢装具を使用し、
麻痺のある足をサポートしながら練習を行います。

作業療法(Occupational therapy:OT)

 「食事」「入浴」のような、日常生活を送る上で必要な身体の機能を獲得することを支援します。また、人が心も身体も健康に生活するためには、仕事・家事などの「役割」だけでなく、趣味・生きがいなど「生活を豊かにすること」も重要です。作業療法は「その人らしい生活の実現」を目標にしています。
 脳卒中を発症すると、脳の一部に損傷を受けた結果、手足の麻痺や、「記憶力」「注意力」「物事を計画立てて行う力」の低下が出現します。そのような場合には、「ご飯を食べる練習」「トイレに行く練習」「服を着替える練習」など日常生活に必要な動作の獲得を目標に関わっていきます。 そして、退院後の生活を見据えて、「ご飯を作る練習」、「電車・バスを利用して外出する練習」、「就労に向けた支援」など社会復帰に向けた関わりも行なっていきます。
 また、趣味や生きがいを持つことで、心・身体は健康となり、生活を豊かにすると言われています。そのため、作業療法の一環として、季節に合わせた草花や野菜の園芸・作品づくりなども行っています。

図5
図5.ご飯を作る練習
実際に包丁を使い野菜を切る、
ご飯を炊飯器で炊く、カレーを作る等、
退院後にどんな生活を送るか想定しながら進めていきます。



図6
図6.右手に麻痺がある患者さんの練習場面
入院前は無意識にできていた動作も、難しくなります。
静かな場所で集中し、根気強く練習していきます。



図7
図7. 季節に合わせた作品づくりと使用した道具の一例
年末には、年賀状作りを行いました。
ちぎり絵や色鉛筆などその方の希望や手の動き、
絵を描くことが得意かどうか等を考慮しながら物品を選択します。

言語聴覚療法(Speech Language and Hearing therapy:ST)

 伝えたいのに上手く話せない、話を聞いても理解できない症状の「失語症」、唇や舌に麻痺があって呂律が回らない「構音障害」などのコミュニケーションの問題や、ご飯を食べる時にむせてしまうなど飲み込みの問題(嚥下障害)が生じることがあります。患者さんが自分らしく生活できるよう、コミュニケーションの練習を行ったり、食事の形態や食べ方を工夫する支援を行っています。
 また、退院後の生活を見据えて、自分が思ったことを言葉で表現し、家族や友人、職場のスタッフとの会話に反応しながら思いを伝えたり、食べることへの楽しみを感じながら食事をとることが出来るよう支援を行っています。

図8
図8.言葉を思い出す練習の様子
個室の静かな環境でじっくり考えたり、
病棟で実際に看護師を交えて練習していきます。



図9
図9.口の体操の様子
個室の静かな環境で集中して行います。

心理的サポート(Psychological Support)

 臨床心理士は、医療チームの一員として急性期・回復期どちらにも関わり、患者さんとご家族に心理的なサポート(カウンセリング、心理教育等)を提供しています。
 ある日突然病に襲われることで、こころに大きなショックを受け、様々な面で不安を感じます。自分の思いを周りに話すことが出来ず、一人で抱えてしまうことも少なくありません。一方で、ご家族も本人も同様に、大きなストレスを感じ、家族だからこそ、お互いの事を思うが故に話しにくいこともあります。急性期では、本人も含めたご家族皆様の混乱した気持ちの整理をお手伝いし、こころのサポートをしていきます。
 また、治療が進む過程のなかで、ストレスが積み重なっていき、心身ともに疲れて意欲が減退したり、不眠や倦怠感を生じることがあります。情緒面では不安を感じたり、イライラしたりと浮き沈みが激しくなることもあります。さらに、治療を受ける意欲が低下したり、他の人に強く当たったりするなど行動面の問題もよくみられます。これらの症状は、病気による「心理的なストレス反応」です。回復期では、このようなストレス反応とうまく付き合って行くことを支援し、安心して治療に取り組めるよう患者さんのこころの健康をサポートします。

図10
図10.面談の様子
ゆっくり、じっくりと傾聴していきます。

急性期

 急性期の役割は、ベッドで寝ている時間をできるだけ短くし、「廃用症候群(安静臥床が続くことによって起こる様々な心身機能の低下や合併症)」を予防することが重要です。安全に配慮しながら、積極的に発症早期から実施しています。内容としては、身体状況に応じて

  • 起立、立位、歩行練習のような動作練習
  • 「食事」「トイレ」「着替え」のような日常生活に必要な動作練習
  • 食べる練習、話す練習 を行います。
図11
図11. 急性期からの流れ
脳卒中後に集中治療を行う「脳卒中ケアユニット(以下、SCU)」
および「一般病棟」では、安全にリハビリテーションを進める為に、
チーム内での情報共有も重要です。



図12
図12.SCUの写真



回復期

 回復期リハビリ病棟では、点滴や手術での急性期治療が終了した後に、より積極的なリハビリが必要な患者さんを対象としています。その為、退院後に一緒に生活されるご家族にも練習場面の見学や介助方法の練習を行ってもらい、介助方法の習得に向けたサポートも行っています。
 リハビリの場所は病棟、リハビリ室だけではなく、退院後の生活スタイルや生活場所を見据えて、公共交通機関を利用した外出練習、1泊2日の外泊練習、車の乗り降りの練習など幅が広がってきます。また、自宅へ訪問し生活環境を整えることも行いますので、早い段階から間取りや段差など自宅環境も確認していきます。
 自宅訪問の際には、退院後に担当となる介護支援専門員や住宅改修業者の方々も参加するため、患者さんとご家族をサポートするスタッフも増えていきます。

図13
図13.12月に開催したクリスマス会の様子
毎月、四季折々のレクリエーション活動を取り入れ、入院中の気分転換や季節に応じた行事を楽しめるよう取り組んでいます。カープのユニフォームに身を包んだリハスタッフが、踊りながら応援歌を歌う様子は広島県ならではの光景でしょうか。



図14
図14.病棟リハビリの様子
集団で、昼食前は看護師、夕食の前にはリハビリスタッフが
口の体操、頭の体操、筋力・体力をつける運動を行い、
少しでも早く力が付くよう活動しています。

生活期(訪問リハビリ)

 自宅を訪問し、身の回りの動作練習や、自宅環境・介護力を考慮したアドバイスを行いながら、趣味や家事などの生きがいや役割をみつけ、地域社会でより充実した生活が送れるようサポートを行います。
 具体的には、

  1. 歩行・トイレ・入浴・更衣・食事・家事などの動作指導
  2. 外出方法の提案や公共交通機関を利用した外出練習など外出に向けた支援
  3. 寝たきりや閉じこもりを防ぐ支援や精神・心理面の支援
  4. 家庭で取り組める自主トレーニングの指導、生活環境に関するアドバイス、ご家族への介助指導

など多種多様です。主治医や介護支援専門員のように地域社会で生活を支援している専門職と連携し、ニーズに合わせたリハビリテーション計画の立案と実施を、明るく元気なスタッフがお手伝いさせて頂きます。

図15
図15. 外出練習の様子
利用者さんのニーズに応じて、
自宅内での運動方法の指導や
公共交通機関を利用した外出練習など、
多様な内容を提供しています。

ニューロリハビリテーション

 一般的には神経疾患(脳・脊髄・末梢神経などの病気)に対するリハビリを指します。最近では、脳梗塞により障害された細胞を再生させる研究が進んでいます。このような再生医療など、研究によって明らかになった脳化学をリハビリ医療に応用した評価・治療方法がニューロリハビリテーションと言われています。
 当院では『ロボットスーツHAL単関節タイプ』をリハビリに利用しています。HAL単関節タイプは、人が動こうとする時の電気信号をセンサーで読み取り、動きのサポートを行います。それにより運動学習を促し、脳卒中後に片麻痺を呈した患者さんの上肢や下肢機能の向上を測り、日常生活動作が少しでも向上する方法の一つとして使用しています。

図16
図16.上肢に装着した場合
肘関節に装着し、ひじの屈伸運動を行ないます。



図17
図17.ひじの屈伸運動の一場面
HALが上腕二頭筋・上腕三頭筋の収縮を補助し、
スムーズなひじの屈伸運動が可能となります。
患者さんの腕の状態に応じて運動回数を設定します。



図18
図18. 下肢に装着した場合
膝関節に装着し、ひさの屈伸運動を行ないます。



図19
図19. ひざの屈伸運動の一場面
HALが大腿二頭筋・ハムストリングスの筋収縮を補助し、
スムーズな膝の屈伸運動が可能となります。
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